ロードバイクに乗り始めた人は、きっと今年のオリンピックで行われた自転車競技が気になって見ていたことでしょう。そして、未だに興奮冷めやらぬという方もいるのでは?そこでこの記事では、オリンピックで行われた自転車競技の振り返りとその魅力について解説していきます。
自転車競技は、第1回の1896年アテネ大会から採用され、途切れることなく実施されている歴史ある競技です。もともと自転車は、18世紀末にドイツで発明されたのがその歴史の始まり。フランスで改良されてヨーロッパで普及し、アメリカに渡りました。
自転車レースは、ツール・ド・フランスなどプロの世界としてのイメージが強い人も多いでしょう。今回の東京2020大会で、オリンピックの自転車競技のことを知った方もいるかもしれません。比較的自転車競技は地味なイメージではあったものの、1992年のバルセロナ大会からプロ選手の参加が解禁となったことをきっかけに注目を集めるようになりました。
現在、オリンピックで行われている自転車競技は大きく分けて下記の4種類があります。
・ロードレース
・マウンテンバイク
・トラックレース
・BMX
それぞれの競技について、簡単に説明していきます。
ロードレースでは、「男子個人ロードレース」「女子個人ロードレース」「男子個人タイムトライアル」「女子個人タイムトライアル」が行われます。
個人のロードレースは、一般公道を使って行うレース。これまでのオリンピックでは周回コースで実施されることが多かったものの、東京2020大会では男子は244km、女子は144kmの本格的なラインレース(スタート・ゴールの場所が別)となっています。東京都の武蔵野の森公園をスタートして、神奈川県・山梨県を通過し静岡県の富士スピードウェイでゴールするという1都3県をまたぐレースとなっており、獲得標高は男子が4865m、女子2692m。
また、個人タイムトライアルは90秒間隔をあけて選手が1人ずつスタートし、ゴールまでのタイムを競う競技。東京2020大会のタイムトライアルは22.1kmのコースが用意されており、男子はこのコースを2周、女子1周走ります。
なお、タイムトライアルのみの出場枠というものは設けられていません。ロードレースの出場枠を持っており、世界ランキング上位の国に2枠出場枠が与えられるというルールになっています。
ちなみに、オリンピックのロードレースにはツール・ド・フランスなどの国際的なレースに出場している選手も多く参加しています。2021年に行われたツール・ド・フランスは6月26日から7月18日まで。今大会のロードレースは7月24日に開催したので、ツール・ド・フランスをリタイヤしなかった選手にとっては直後のレースとなりました。21日間のレースを走り切った選手にとって過酷な状況になるのでは…というイメージですが、なかにはレース直後の方がパフォーマンスが上がるという選手もいるのだとか。
このように、ツール・ド・フランスとオリンピック両方にエントリーしている選手がどのような走りをするのか?といった点も楽しめたポイントではないでしょうか。
マウンテンバイクは、未舗装の山道を走る競技です。
1周あたり4〜6kmのコースとなっていることが一般的で、急勾配のアップダウンや狭い部分なども組み込まれているところを走行します。コースの難所をクリアするのは体力と技術も必要。
レースは全ての選手が一斉にスタートしますが、1周目トップの選手のラップタイムを基準として、トップとの差が基準タイムの80パーセントに達した選手は脱落するというルールでレースが行われます。
東京2020大会では、全長4.1km、高低差150mの伊豆マウンテンバイクコースで競技が行われました。コースの途中には富士山を望めるポイントがあるなど、さまざまなコースが用意されているのも特徴的でした。
ちなみに、こちらのマウンテンバイク(クロスカントリー)で使用される自転車・マウンテンバイクはロードバイクとは異なり、山岳地帯などでの走行ができるように軽量化され、衝撃にも耐えられる作りとなっています。
特に振り返ってみて印象的だったのが、なんといってもそのコース。
「天城越え」「浄蓮の滝」「散り桜」など、日本の情景を思わせる美しい名前がつけられたダイナミックなセクションが用意。それぞれの選手がこれらのセクションをどのようにクリアしていったのかが、楽しめたポイントだったと思います。
一見すると自転車では走れないのでは?と感じてしまうような難所を次々とクリアしていく様子は、ただ圧巻のひとこと。「道無き道」を駆け抜けていく選手たちからは、学べる技術もあったのではないでしょうか。
オリンピックで開催される自転車競技の中で、最も種目が多いのがこのトラックレースです。
個人でゴールまでの着順を競う「スプリント」、4人1組の2チームで行われ、対面でスタートして相手を追い抜く、またはタイムで勝ることで勝ちとなる「チームパシュート」、7人の選手でトラックを6周して順位を競う「ケイリン」、男子は1チーム3人・女子は1チーム2人で行われる「チームスプリント」、トラックレースの複合種目である「オムニアム」までが、これまでのオリンピックで行われてきました。オムニアムとは1日に4つのレースを行い、それぞれのレースの合計得点によって順位が競われるものです。4つのレースとは、選手が一斉にスタートして順位を争う「スクラッチ」、周回ごとに先頭選手がポイントを獲得する「テンポレース」、2週ごとに最後尾の選手が脱落していく「エリミネーション」、30kmの距離を走破しながらポイントを獲得していく「ポイントレース」の4種類があります。さらに東京2020大会からは、上記に加えて新種目として2人1組で行われる「マディソン」が採用。ルールは、男子50km、女子30kmの距離を交代しながら走るというもので、交代は選手の体に触れればOKというものです。
このように、トラックレースは非常に多くの種目が行われましたので、見所も多かったのではないでしょうか。
また、トラックレースで使用されている機材に注目された方もいたのでは?
機材を見ると、公道を走るロードバイクと異なり、ブレーキがついていないバイクを使用していることが分かったはず。これはピストバイクと呼ばれるもので、最高速度70kmを超える高速での走行が可能。そんな圧倒的な速さで駆け抜ける選手の技術は、見ていてハラハラしてしまいました。
爆発的なスピードとポジション争い、どの選手がどのタイミングで仕掛けるのか、さまざまな駆け引きなど、非常にスリリングな展開だったので、気づいたらスタートからあっという間にレースが終了していましたね…。
BMXは8mの高さにあるゲートから最大8名の選手が一気にスタートし、起伏が激しいコースで順位を競うレース。レースの中では高いジャンプをくりかえし、さらに傾斜のあるコーナーを抜けてゴールを目指します。大きなジャンプや接触など非常に激しい競技だけに、迫力が見所の競技であるといえるでしょう。
また、東京2020大会では初めてBMXフリースタイルが行われるということもあって、以前より注目されていました。内容は、スロープや曲面を組み合わせた施設の中でトリックを行い、その点数を競うというものです。
BMXはそれぞれの選手が自由に改造した20インチの自転車を使用する競技。BMXレーシングは1つのレースの所要時間がわずか40秒ほど。接触・転倒が頻発することから「自転車の格闘技」とも呼ばれています。
確かに、開始から選手たちが全神経を集中させている張りつめた空気は、見ているこちら側も緊張…。そしてシグナル音とともに発散されるエネルギーは圧巻でした。例えていうなら、このレースはジェットコースターを体験しているような感覚が近いと思います。ちなみに、レース中の最高速度は60km以上、ジャンプは10m以上飛ぶこともあるそうです。
また、今大会から初めて実施されたBMXフリースタイル。
これまで自転車競技といえば、スピード重視の傾向がありましたが、これはアクロバティックな技やジャンプなどで得点を競う新たな競技スタイルなので、以前より注目されていました。
テールウィップやバースピンといった基本的な技から、大技の360度バックフリップを決めた選手など、それぞれに多彩で独創的なトリックの組み立てには見入ってしまった方も多いはず。
この記事でご紹介したように、今回のオリンピックでは多彩な自転車競技が行われました。「ロードバイクにしか興味がない」と思っていた方も、これらの競技を見て、きっと「面白い!」と感じられたのではないでしょうか。
以上、「東京2020オリンピックの自転車競技を振り返る!」でした。
ちなみに次回の記事は、先日10月31日(日)に千葉県で開催された日本最大規模のトライアスロンレース「九十九里トライアスロン(99T)」に参加したときの様子をお届け。オリンピック閉会後の国内初となる大型のレースということもあって、その熱がまだ冷めない気合の入ったメンバーが参加しています。