マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)とは、2019年9月15日に東京で開催されたマラソン大会。2020年の東京オリンピックマラソン代表の選考レースとして、1回限りの予定で開催された大会です。
上位2位の選手までが、実質的には東京オリンピック日本代表に即内定ということもあり、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は日本中で注目されました。
もとより、他のマラソン大会と違って出場権を得た選手の大半が日本を代表するようなトップランナー。福岡国際マラソンや大阪国際女子マラソン、別府大分毎日マラソン、東京マラソン、びわ後毎日マラソンなど、国内の有名なマラソン大会で規定の成績を残した選手のみが参加できる大会でした。男子選手35名、女子選手15名のみによるトップランナーたちだけの戦いです。
なお、大会前における識者の予想では、男子レースにおいては、大迫傑(日本記録保持者)、設楽悠太(前日本記録保持者)、服部勇馬(2018年福岡国際マラソン優勝)、井上大仁(2018年アジア大会優勝)が4強とされました。
女子レースにおいては、絶対的な実力者が不在とされる中、松田瑞生と鈴木亜由子がリードする展開になると予想されています。
なおマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)のコースは、2020年東京オリンピックでのマラソンコースとほぼ同じ。新国立競技場が未完成のため、スタート・フィニッシュ地点のみ明治神宮外苑周辺へと設定しています。
マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を通じ、男子から2名、女子から2名の計4名が東京オリンピックの日本代表に内定。男子は中村匠吾(26/富士通)と服部勇馬(25/トヨタ自動車)、女子は前田穂南(23/天満屋)と鈴木亜由子(27/日本郵政グループ)でした。
代表内定者が4名誕生したこととは別に、男子日本記録保持者である大迫傑が内定から外れてしまったことは、多くの人にとって意外に受け止められたかも知れません。
高校時代に5,000mで頭角を現し、大学時代(駒澤大学)では駅伝選手や10,000m、ハーフマラソンなどで活躍。駅伝では同級生の村山健太の陰に隠れていた感もありながら、自身も2年次から3年連続で箱根駅伝に出場し、それぞれ区間3位、区間2位、区間賞を獲得。出雲駅伝と全日本大学駅伝にも計4回出場し、うち3回は区間賞を取るなど、大学時代から確実に実力を見せていたランナーです。
マラソン選手としては、2018年3月のびわ湖毎日マラソンが初めてのレース。デビュー戦にして日本人男子首位となる2時間10分51秒を記録しました。
マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では4強に数えられていなかったものの、下馬評を覆し、見事1位で東京オリンピックに内定。
中学時代には全日本中学陸上1,500mで7位入賞。高校時代には青森インターハイ5,000mで5位入賞。東洋大学へと進学し、1年次から駅伝メンバーとして活躍しました。
2年次に出場した出雲駅伝では5区を担当し区間記録を樹立。第90回箱根駅伝では「花の2区」を担当し、東洋大学の往路優勝・総合優勝に大きく貢献しました。
初マラソンは2016年の東京マラソン。2時間11分46秒で日本人4位という記録でした。2018年の福岡国際マラソンにて自己ベストとなる2時間7分27秒で優勝。マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)への切符を手に入れました。
高校3年生のころ、インターハイ大阪府大会1,500mにて大会新記録を樹立。卒業後は岡山の実業団チームである天満屋に入社し、女子陸上部に入部して本格的にマラソンを始めました。
2017年1月、大阪国際女子マラソンでデビュー。2時間32分19秒で12位という記録でした。同年8月の北海道マラソンでは2時間28分48秒で優勝。この記録により、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)への出場権を獲得しました。なおマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)では、2位の鈴木亜由子に4分近い差を付けて圧勝。
中学時代は800mと1,500mで全国制覇した経験があるものの、高校時代には故障の影響で目立った成績を残せず。2010年に名古屋大学へ進学し、以後、ふたたび頭角を現してきた選手です。大学4年次に出場した第27回夏季ユニバーシアード(ロシア)では、10,000mで金メダル、5,000mで銀メダルを獲得。大学卒業後は日本郵便に入社し、同年に創設された女子陸上部に第一期生として参加しています。
2018年8月、北海道マラソンにて人生初となるフルマラソンに挑戦。結果2時間28分32秒で優勝し、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)への出場権を獲得しました。
もともとマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)は、日本陸連における代表選手選考の不透明さを解消するために着手されたプロジェクト。出場権の獲得プロセスが極めて明瞭で、かつ、MGCで上位2位までに入った男女は即東京オリンピック日本代表内定ということもあり、マスコミからも多くの国民からも「分かりやすい」との前向きな評価を集めていました。
実際にレースを終えた今、MGCは多くの人たちから支持された大会だったようです。一発勝負という要素に賛否両論があったものの、出場権の獲得にいたるプロセスを考慮すれば、長丁場での戦いという側面もあります。長丁場を制して一発勝負で決まるのがオリンピックだとすれば、MGCを通じ、本当にオリンピックに強い選手が発掘されるかも知れません。
一方で日本陸連の尾県貢専務理事は、MGCの継続に関して慎重な発言をしています。透明性の高いレースとなったことを評価する一方で、今後のMGCについて「そのままの形で続けられるとは思えない」「この要素をどう継承していくか」など、やや濁したようなコメントを残しています。今後の日本陸連の発表に注目していきましょう。
2020年の東京オリンピックマラソン日本代表のいて、残された枠は男女ともに1名ずつ。この1枠を狙い、選手たちは来年3月まで続く「ファイナルチャレンジ」を戦います。
「ファイナルチャレンジ」として位置づけられている大会は、男女ともに3レース。この3レースの中で、男子の場合は2時間5分49秒を突破した選手が、女子の場合は2時間22分22秒を突破した選手が、残りの1枠に決まります。突破する選手がいなければ、MGCでの第3位の選手が自動的に五輪切符を手に入れることになります。
男子の設定記録である2時間5分49秒は、ほぼ日本記録と同等の高いハードル。2時間6分台の記録を持つ設楽と井上に期待はかかるものの、もし、ともに突破することができなければ、残りの1枠はMGC3位の大迫に決まります。逆に突破すれば、大迫は五輪切符を逃します。大迫にとって「ファイナルチャレンジ」に参加すべきかどうか、判断が難しい場面でしょう。
女子の設定記録である2時間22分22秒については、男子ほど高いハードルではありません。MGC出場者の安藤友香は、2時間21分36秒の自己ベストを持っています。MGC3位の小原は、まったく安心できないでしょう。