自転車は便利な移動手段になりますが、サイクリングとして趣味にしたり、エクササイズに活用する事も出来ます。特に足を使う以上、下半身への効果は非常に高く、様々な範囲の筋肉を鍛えられます。本記事では、自転車で鍛える事の出来る筋肉や、お勧めの乗り方などについて解説します。
通勤のための足として使ったり、またはダイエットのために自転車に乗っているという方も少なくないでしょう。足を使っているために、下半身はもちろんの事、全身を鍛える事が出来ます。まずは、どの部位の筋肉が鍛えられるのかの解説からになります。
1か所目は、ハムストリングスです。ハムストリングスとは、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋という3つの筋肉を合わせた総称の事であり、太ももの裏側にある筋肉の事を指しています。 このハムストリングスは、膝の関節の屈伸、そして股関節を伸ばす役割を担っています。自転車のペダルを漕ぐ時には当然ながら膝も股関節を曲げたり伸ばしたりといった動作が入りますので、必然的に鍛える事が可能という訳です。
2か所目は、大腿四頭筋です。大腿四頭筋とは「四」の数字が入っている事が指し示しているように、大腿直筋、中間広筋、内側広筋、外側広筋という4つの筋肉をまとめてそう呼びます。ハムストリングスとは逆位置の、太もも前面に存在しています。 体の中でも筋肉として占めている割合が大胸筋と並んで多い部位であり、自転車を漕ぐ時の力は実に4割がこの大腿四頭筋が担っています。大腿四頭筋の筋肉を伝えて、ペダルを回す事で鍛えられるのです。
3か所目は、下腿三頭筋です。下腿三頭筋というのは、後に詳しく解説するヒラメ筋と腓腹筋の総称の事であり、足の先を伸ばしたり膝を曲げる時に使われる筋肉です。所謂ふくらはぎがこの筋肉に相当し、体に流れる血液を心臓に戻す役割を担っています。 その為、体の中の第二の心臓、とも呼ばれる部位です。自転車を漕いでいる際には、ペダルを踏み込んで力を入れる時に、この下腿三頭筋を使っています。鍛える事で、先に解説した大腿四頭筋の力をスムーズにペダルへ伝えられ、より加速しやすくなります。
大臀筋は、お尻にある筋肉の事です。普段の生活ではあまり意識して使っている部位では無さそうですが、走ったり、飛んだりといった股関節の動き全般に関わっており、自転車を漕ぐ時にはペダルを踏み下ろすときに主に用いられます。 日常的に何となく乗っているだけでは、中々この大臀筋を鍛えるのは難しい話です。サドルの後方あたりに座ってやや前傾姿勢の状態になり、ペダルを前に押し出すかのようにして漕ぐことで、初めて大臀筋を意識的に使った事になります。
腸腰筋とは、下半身と上半身を繋いでいる筋肉の事です。大腰筋、小腰筋、そして腸骨筋の3つの筋肉に分けられ、主に太ももと背骨とを繋いでいます。太もも、膝を持ち上げるなどの動作で主に使われ、立っている状態を維持するのにも欠かせない筋肉です。 自転車を漕ぐ際には、ペダルを足で踏み込んだ時、踏み込んでいる足とは反対側の足をお腹へと引き付ける時に使われています。太もも、膝が持ち上がっている訳ですから、この時に腸腰筋が使われるのです。 腸腰筋が鍛えられると、体のバランスや姿勢を良くする効果があるのに加えて、ハムストリングスや大腿四頭筋にかかる疲労を軽減できるとも言われています。その為、長時間のサイクリングの維持にも繋げられます。
背筋も自転車に乗る事によって鍛えられます。僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋という3つの筋肉で構成されている、背中にある筋肉を指し、ペダルを漕いでいる時には下半身の筋肉と同時に背筋も使用しているのです。 特に、クロスバイクやロードバイクといった、乗る際に前傾姿勢になるようなタイプの自転車の場合、その姿勢を維持する事で背筋が鍛えられます。前傾が無理なく取り続けられるようになれば、ペダルを踏み込むときに無駄に分散せずに乗れます。
下腿三頭筋を構成している、ヒラメ筋、そして腓腹筋もそれぞれ鍛えられます。ヒラメ筋は膝の下からかかと部分まである筋肉で、足でペダルを踏み下ろすときに使っています。腓腹筋と同時に鍛えれば、足の血液を心臓へしっかりと送り返せます。 そして腓腹筋は、大腿骨からかかとまである筋肉になります。こちらはヒラメ筋と同じく足を踏み下ろすときと、一部足を持ち上げる時に使います。ペダリングの際は、土踏まずに近い位置で踏み込むと負担が無駄に多くなくて済みます。
最後に、体幹の筋肉も鍛える事が出来ます。これまでご紹介してきた体の表面にある筋肉ではなく、体の内側にある筋肉の事であり、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋といった筋肉が体幹に相当し、インナーマッスルとも呼ばれます。 クロスバイク、ロードバイクなど、前傾姿勢を取り続ける必要のある自転車だと、背中だけではなくお腹周辺の筋肉も使いながら乗りますので、必然的に鍛えられます。すると、背中や腰に負担をかけなくなり、長時間走行も可能になります。
ここからは、実際に自転車に乗るときの筋肉を鍛える方法になります。まずサドルについてですが、自転車のサドルは高くするとより痩せやすくなります。座る面が高くなる分前傾姿勢になり、下半身のみならず背筋やインナーマッスルなど、全身の筋肉を使うようになるからです。 自転車は乗り方1つで使う筋肉が違ってきますので、サドルの高さについては事前に必ず調整しましょう。目安としては、つま先が地面に触れる程度です。逆に高さを低くして、ペダルを土踏まずの位置で意識して踏むと、太もも前面の筋肉が多く使われ鍛えられます。
続いて、ギアの選択になります。自転車のギアは、自分で自由に選択する事が出来ますので、使い分ける事によってトレーニングマシンのように作用させられます。まず、筋肉をしっかりと太くしたい場合、ギアは重い方を選択しましょう。 重くなる分、当然ながらペダルを漕ぐ力は相応に強くする必要があります。つまり、ギアを重くする事は、イコールでペダルに負荷をかける事と同義です。適度に筋肉も鍛えられ、自転車を漕ぐこと自体有酸素運動ですので、効果的に鍛えられます。
もしも痩せる事が主目的の場合には、逆にギアは軽めに設定して走りましょう。こちらも必然的に漕ぐ回数が多くなり、息が弾む程度の早さと負荷で漕ぐのが適切です。また、一定時間早い回転で漕ぎ続けると、持久力も身に付きます。
自転車の設定も当然ながら大事ではありますが、走るコースによっても自分の筋肉にかかる負荷は変わってきます。最も筋肉と体力をつけるのに効果的なのは、傾斜のある坂道を上るコースを選択する事です。 傾斜のある坂道を自転車で走ろうとすれば、どのギアを選択していても平地を走行するよりもペダルは重くなります。すると、1回ずつ漕ぐ力も相応に必要です。あまりきつい坂ではなく、少し坂になっている程度のコースが適しています。
特に、ギアを重いものに設定して坂道を上るとなれば、より高い負荷を筋肉にかけることになります。これが効果的な筋トレになるだけではなく、持久力を身に着けるのにもつながるという訳です。
最後に自転車に乗っている際のスピードについてですが、筋肉を鍛えるためのトレーニングとして乗っていますので、ある程度の速度は必要です。乗っていて少しきつい、と感じる程度のスピードが最もベストな速さになります。 きつさを多少感じるスピードだと、大腿四頭筋や下腿三頭筋といった筋肉の力を、大きく、そして長く使う事になります。平坦な道でスピードをを付けて走るのも効果が無い訳では無いですが、しっかり鍛えたい場合には、やはり坂道がお勧めです。 勿論、強すぎる傾斜のある坂では、体に無理を強いることになってトレーニングどころではありませんから、この場合も少し負荷が高いと感じる程度の多少の傾斜がある道が良いです。
自転車は足を使って漕ぎますから、下半身だけを鍛えるものになるかと思いきや、全身の筋肉に効果的に作用します。乗り方の工夫によって、どこにどれだけの負荷をかけるかの調整も可能ですので、ぜひ自転車での筋肉の鍛え方をマスターしてください。