競技中や練習中は大量の汗をかくため、身体は多くの水分を失うことになります。運動パフォーマンスの低下や脱水症を予防するという意味でも、トライアスロン競技では〝サイクルボトル〟の利用は必須です。サイクルボトルにはたくさんの種類がありますが、ただ適当に選ぶのではなく、自分が出場する大会などに合わせて、どのボトルを使用するか選べるようにしておきましょう。今回は、サイクルボトルの選び方やおすすめの「サイクルボトル」をランキング形式でご紹介します。ぜひ参考にしてください。
〝サイクルボトル〟とは、自転車用のドリンクボトルのことです。ドリンクボトルを入れる専用のフレーム(ボトルケージ)を、ダウンチューブやシートチューブ、DHバー(エアロバー)、サドルなどに取り付けることで、自転車にボトルを装備することができるため、競技中いつでも水分補給をすることが可能になります。出場する大会によっては、大会側が用意したボトルを使用することもありますが、競技中の水分補給は練習が必要なため、サイクルボトルは自分で用意しておくようにしましょう。
運動中の発汗などにより、水と塩分(電解質)で構成される体液が失われ、体液の供給が不足している状態のことを〝脱水症〟といいます。人間は体重の2%以上の水分を失うと持久力のパフォーマンスが低下し、3%以上の水分を失うと、瞬発力のパフォーマンスが低下するとされています。運動パフォーマンスをなるべく維持するためにも、こまめな水分補給は必要不可欠です。また、電解質は、筋肉の収縮や神経の伝達、心臓の収縮などの重要な役割を果たしており、筋肉や骨から電解質が失われると、脚をつったり、しびれが起きたりすることもあります。
脱水症対策は、ただ水分を摂取すれば良いというわけではありません。先ほども説明したように、脱水症は〝水分と電解質が不足している状態〟のため、電解質を失った状態で水分だけ摂取しようとすると、体内の電解質のバランスが崩れ、〝水中毒(吐き気、嘔吐、倦怠感など)〟を引き起こすことになります。水分補給の際は、水分と同時に塩分も摂取できるようにしておきましょう。
体内の水分が多く失われている状態を、「高張性脱水」といいます。体内の水分が不足することで、細胞外液のナトリウムイオンの濃度が高くなり、それにつれ血漿浸透圧が上昇します。主な症状は、喉の乾きや尿量の減少などです。自分で水分摂取ができない、乳幼児や高齢者に多い脱水症になります。
水分とナトリウムが同時に不足しており、特に電解質(ナトリウム)の喪失が著しい状態であることを、「低張性脱水」といいます。発汗をともなう長時間のスポーツ時に発症しやすく、電解質の補給が不十分だと、ナトリウム欠乏性脱水を起こすことがあるため、トライアスロンの練習中やレース中は、適切な水分補給を行う必要があります。
大会の種類によって競技時間は異なりますが、3種目を連続で行う〝トライアスロン〟は過酷な競技であり、レースが長時間になるほど、より適切な水分補給が必要となってきます。トライアスロンのレース中は、補給食を取ることも可能ですが、ここではレース中の水分補給について、詳しくご説明したいと思います。
運動中は、活動筋に血流が分配されることから、胃腸への血液供給が低下し、胃腸が酸素不足に陥ります。そのため、運動中は、胃腸が活動するのに適している状態ではないため、消化できる量も限られています。その消化できる範囲より多い量の水分を摂取してしまうと、胃腸の消化能力をさらに低下させることになり、消化できない水分による膨満感から吐き気などをもよおすことになります。また、ペース配分に慣れていないトライアスロン初心者の方によくありがちな、序盤からとばしてしまうオーバーペースは、胃腸に供給される血液量をさらに減少させる原因になるため、注意が必要です。
まず、胃腸に供給する血液量を確保するためには、
の2つがポイントになります。
先ほども説明した通り、運動中は胃腸の消化能力が落ちているため、水分を一気に摂取することは胃腸に負担がかかることになります。大事なのは、胃の中を満タンにしないよう、空に近い状態を意識しながら、身体の脱水対策を行うことです。パフォーマンスの継続や、脱水症状で命を危険にさらさないという意味でも、運動中の水分補給は必須ですが、特にロングディスタンスのように競技時間が10時間以上に及ぶ場合は、汗によって失った分だけ水分を補うことは、運動中に低下してしまう胃腸の消化能力を考えても難しく、水分の摂り過ぎによる「水中毒」を発症する危険性もあります。
汗をたくさんかくと、水を一気飲みしたくなる方も多いと思いますが、脱水は体の水分だけでなく、電解質(ナトリウム)も不足している状態のため、水と塩分は同時に摂取するようにしましょう。もし、塩分を摂らずに水を一気飲みし、〝水中毒〟の症状(めまい、吐き気、頭痛など)を引き起こしてしまった場合は、胃や腸を圧迫させる「DHポジション」を一度やめ、回復するまで楽な姿勢をとりましょう。
人により胃の消化能力は異なりますし、当日のコンディションや天候、レース中のペースによっても身体の状態は変わってきます。補給のタイミングは個人差があるため、練習から常に本番を想定した補給の練習を行い、自分に合った補給方法を探していくようにしましょう。
適切な水分補給には、摂取量や摂取するタイミングはもちろん、何を飲むかも重要になります。激しい運動や長時間にわたる運動の脱水症状には、ナトリウムを含んだ水分を摂取するのが効果的ですが、よく練習中にも取り入れられている「スポーツドリンク」は、ナトリウムの他に、7~8%の糖質が含まれているものが多くあります。運動中に摂取する飲み物として理想的な糖の濃度は、2~2.5%といわれているため、糖分を過度に摂取すると、胃腸に負担がかかってしまうだけでなく、血糖値が急激に上昇し、逆に水分が欲しくなってしまったり、低血糖状態に陥るため、一時的な運動パフォーマンスの低下にも繋がったります。これらのことを踏まえ、糖濃度の高いスポーツドリンクは、トライアスロンレース中に飲むことはあまりおすすめできません。また、ナトリウムも濃度が濃ければ良いというわけではありません。
レース中の水分補給には、電解質を補うことを目的とした、糖濃度が低い「経口補水液」などを取り入れるのが良いでしょう。
〝グリセリンローディング〟とは、グリセリンが含まれているサプリメントを取り入れた方法です。〝グリセリン〟とは、体内でも脂肪酸と結合することで中性脂肪として存在している物質で、水に溶けやすく、高い吸水性と保水性を持っています。せっかく水分を補給しても、水分は細胞内まで取り込むことができず、細胞外にとどまり、汗や尿として水分が出ていきやすい状態になっています。
しかし、グリセリンを水に溶かして飲むことにより、グリセリンの性質によって水分を細胞内まで取り込むことができ、発汗などを抑えることができるのです。これにより、過酷なレース中でも、水分補給が追い付かないといった事態を防ぐ効果が期待できます。グリセリンは、一般的に安全性に問題のない成分で、適度な摂取を心がければ、副作用の心配もないとされています。
先ほど、練習中も本番を想定した水分補給を行うことが大切だと説明しましたが、レース中に効果的な水分補給をするために、大会の約1か月前から行う、〝ウォーターローディング〟という方法があります。〝ウォーターローディング〟とは、簡単に説明すると、「喉が乾いていない時も水分を摂るようにする」という水分補給方法のことで、喉が渇いてから水を摂取するのではなく、常に同じ量の水をこまめに摂取することで、身体の水分が満たされている状態を作ることができます。これにより、発汗で水分を失っても、運動パフォーマンスの低下を抑えることができると考えられています。目安としては、1日に、トータルで約1~1.5ℓの水の量を毎日飲むようにします。また、内臓に負担がかからないよう、一気に多量の水を飲むのではなく、1回250mlずつに分けて摂取するのがおすすめです。また、ウォーターローディングに取り入れる水は、「軟水」が良いとされています。
トライアスロン競技中の水分補給のタイミングは、次の種目に移るまでの間(トランジション)や走行中などがありますが、バイク種目では、自転車を漕ぎながら、不安定な状態で水分補給を行うことになるため、片手でボトルを操作できるものを選ぶようにしましょう。サイクルボトルには、片手でキャップの開け閉めができるものや、飲み口を口で引っ張って開けることができるタイプのもの、ボトルを軽く握るだけで飲み口が自動開閉する機能性の高いものまであります。走行中は、キャップがない方がスムーズに水分補給を行うことができますが、泥はねやホコリなどで飲み口が汚れてしまう可能性もあるため、衛生面にこだわりたい場合は、キャップ付きのものを使用するのがおすすめです。
サイクルボトルには、400mlの少なめのものから、500mlの基本的なサイズ、750mlの大容量まで、さまざまな大きさのものがあります。自分が必要とする水分の量や、その時の気温や出場する大会、練習で走る距離なども踏まえて、ボトルの大きさを使い分けていくのがおすすめです。ただ、汗をかきやすい夏場などは、750mlの大容量サイズを使用するのも良いのですが、その分、重量が重くなってしまうことや、バイクに取り付けたフレームにボトルが収まらない、または入りづらいといったトラブルも出てくるため、選ぶ際には注意するようにしましょう。逆に、小さいサイズのボトルを選ぶと、補充の回数が増えてしまう原因にもなるため、普段から、自分になったボトルのサイズはそれか、意識して練習しておくと良いでしょう。
サイクルボトルには、主に、保冷・保温機能なしの通常のボトルと、断熱材を使用した保冷・保温機能があるボトル、断熱材を使用したボトルよりもさらに保冷・保温性に優れた、サーモボトルがあります。保冷・保温機能があるものは、断熱材の使用などにより、ボトルの素材が厚めである分、通常の同じ大きさのボトルと比べても容量が少なかったり、ボトルが硬めで少し握りにくかったりする他、保冷・保温機能なしのボトルより、価格が高い傾向にあります。また、サーモボトルは、保冷・保温性に優れていますが、重量が重いため、特にスプリントディスタンスのようなスピード勝負のレースでの使用はあまりおすすめできません。暑い時期に行われる大会では特に、ぬるくなった飲み物を摂取するより、冷えた飲み物を摂取したいという方もいると思うので、保冷・保温機能つきが良いという方は、デメリットも理解したうえでボトルを探してみると良いでしょう。
残量が分かると、水分補給の間隔や一回分の量なども調整しやすくなります。半透明のサイクルボトルは中身が見えるため、飲み物があとどのくらい残っているかを把握することができます。ただし、半透明ボトルは、保冷・保温機能がないものがほとんどになります。
サイクルボトルは、ボトルを収納するためのボトルケージを、バイクに取り付けることによって装備します。そのため、サイクルボトルを選ぶ際は、サイクルボトルとボトルケージのサイズが合うかどうかを確認することが重要です。無理やり収納してボトルが抜けなくなったり、競技中にボトルを落としたりするのを防ぐためにも、容量の大きいボトル、または容量の小さいボトルを使用したい場合は、それに合うボトルケージに買い換えるようにしましょう。商品によっては、サイクルボトルとボトルケージがセットになって販売されているものもあります。
また、体の大きさに合わせてフレームの小さいバイクを使用している場合、長さがあるサイクルボトルだとフレームにぶつかってしまう可能性があります。そのため、ボトルケージに収納できるかどうかだけでなく、バイクのフレームとの相性も確認しておくようにしましょう。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/auc-ad-cycle/206-1024/)
サイクリストのために設計された磁気ボトルシステム。ボトルネック部分にある磁気リングにより、360ºどの場所からも磁気接触を行うことができます。ボトル上部を掴むと自転車が持ち上がるほど強力な磁力ですが、テコの原理で簡単にケージからボトルを外すことが可能です。ボトルは、臭い、汚れ、雑菌の付着を防ぐPurist加工。素材はビスフェノールA不使用のプラスチック製で、食品グレードの素材を100%使用しています。
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(https://item.rakuten.co.jp/bebike/elite-fly-750/)
軽量で、柔らかさと耐久性を兼ね備えたプラスチック素材を使用。人間工学に基づいた新型の吸い口は、旧製品と比べて飲み物が流れてくる量も増えています。身体に悪影響を及ぼすとされるビスフェノールAは不使用。全部で5種類のカラーバリエーションがあります。
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自転車の運転中でも飲みやすい、ワンプッシュオープンシステム。環境にやさしい飽和ポリエステル樹脂を採用した、安心の素材です。飲み口は細いため飲みやすく、キャップは広口で氷や飲み物が入れやすい他、洗いやすくなっています。カラーは全部で5種類。
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1994年に、アメリカのコロラド州ボウルダーの小さなガレージからスタートしたポーラボトルは、ドリンクの冷たさをいかにキープするかを追及し開発された、サイクリング用保冷ボトルです。金属ホイルと空気層による二重構造で熱を遮断し、優れた保水力を発揮します。
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(https://item.rakuten.co.jp/aris/eliicefly/)
従来製品と比べ、圧倒的に軽量で柔らかいのが特徴の保冷ボトル。新型の飲み口は、流量がアップして飲みやすくなっています。広口で洗いやすいのも嬉しいポイントの一つ。保冷・保温効果は2.5時間持続します。カラーは、ブルー・スモーク・グリーン・レッド・クリアの全5種類です。
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(https://item.rakuten.co.jp/aris/tmssb600bk/)
サーモスのスポーツバイク専用ボトル。真空断熱層があるステンレス製魔法びん構造で、10度以下を6時間維持することができる、高い保冷力が特徴です。飲み口はストロータイプになっており、片手ワンタッチ・オープンで、素早い水分補給が可能。ボトルは、ライド中でも握りやすい形状となっています。他に、ステンレスレッド、ステンレスホワイトの2色があります。
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(https://item.rakuten.co.jp/liten-up-your-bike/608/)
適度に柔らかいボディでライド中も水分補給がしやすく、飲み口の弁は握った時だけ開くようになっているため、さかさまにしても飲み物がこぼれてしまう心配がありません。通常のボトルと比べて4倍の保冷能力を持っており、長時間のトライアスロンレースにも最適です。内部は臭い移りやカビの繁殖を抑える作りとなっており、ボトル特有のニオイも気になりません。カラーは、ホワイト/ブラックを含めて全3色です。
サイクルボトルを装備する位置、つまり、ボトルケージを取り付ける位置は、ダウンチューブ、シートチューブ、DHバー、サドルの後ろなどになります。サイクルボトルは最低でも2本用意しておくのが良いため、ダウンチューブとシートチューブの2ケ所に取り付けておくのがおすすめです。もちろん、ボトルを取り出しやすいと思う位置は人によってそれぞれ異なるので、自分の好きな位置に装備できるようにしておきましょう。
また、ボトルを何本装備するかによって重量も変わってくるため、一番初めの給水所まで距離はどのくらいあるのかを確認し、例えばボトルを3本搭載できるようにしといて最初は2本だけ持っていくなど、あらかじめボトルの本数を決めておくのもおすすめです。
サイクルボトルに多い形状で、他のスポーツでもよく使用されている「スクイズボトル」は、飲み口や飲み口周りの形状が複雑で、液体が通るチューブも細いものが多いため、汚れやすかったり、洗いにくかったりします。洗い残しがあると、カビが繁殖する原因にもなるため、なるべく細かく分解し、パーツ一つ一つを丁寧に洗っていく必要があります。スポンジだけでなく、歯ブラシなどを使ってみたり、定期的に漂白剤につけたりするのも一つの方法です。
「サイクルボトルを選ぶポイント」でもご説明した通り、サイクルボトルのサイズは、ボトルケージのサイズと相性の良いものを選ぶようにし、競技中にボトルを落とさないようにしましょう。大会によってルールは異なりますが、万が一競技中にサイクルボトルを落とした場合は、先にバイクをコース端の安全なところに止めて、他の選手の邪魔にならないよう、ボトルを回収していきます。
今回はサイクルボトルをご紹介させていただきましたが、いかがでしたか?
大事なポイントは
ということです。
ボトルの形状や機能性は、走行中の水分補給のやりやすさにも関わってくるため、とても重要になります。体調を管理しながらレースに臨めるよう、自分に合うサイクルボトルを見つけて、練習のうちから補給の練習に取り組むようにしていきましょう。