トライアスロン競技で、バイク乗車時に着用が義務付けられているヘルメットは、実は用途によってさまざまな形状に分かれています。「どんなヘルメットを着用するか」はタイムにまで影響してくることなので、しっかり目的に合ったものを選ぶことが大切です。いくつか揃えておけば、その時のコンディションなどに合わせて、ヘルメットの種類を使い分けることもできます。今回は、たくさんの種類の中から自分に合ったものを選ぶためにも、ヘルメットを選ぶポイントやおすすめのヘルメットをランキング形式でご紹介したいと思います。ぜひ参考にしてみてください。
スポーツバイクに乗る際に着用するヘルメットには、転倒や事故の際に衝撃から頭部を守る、大事な役割があります。道路交通法では装着の義務はありませんが、トライアスロン競技では、基本的に、練習・本番関係なく、バイク乗車時は常にバイク競技用の硬質ヘルメットを着用しなければなりません。特に、ロードバイクやトライアスロンバイクといった、高速走行に特化した自転車だと、レース中では時速30~50㎞ものスピードが出る分、落車した時の衝撃も強いですし、車体が軽いため放り出されやすくなっています。万が一転倒した際に、ヘルメットを着用しているのと着用していないのとでは、深刻度に大きな差が出るでしょう。トライアスロン競技の大会規則だからというだけでなく、自分の身の安全を守るためにも、自転車乗車時のヘルメットの着用は常に心がけるようにしましょう。
ヘルメットは、用途によってさまざまなタイプに分かれます。
TT・トライアスロン向けに作られたヘルメットは、ライディング中に頭部で発生する空気抵抗を限りなく抑えた、スピード重視のつくりになっています。しかし、通気孔(汗などで頭が蒸れるのを防ぐ)の数が最小限に抑えられ、後頭部が後ろに伸びた流線型が特徴の「TTヘルメット」は、着用を禁止している大会も多いため、注意が必要です。
「エアロヘルメット」は、TTヘルメットとロードヘルメットの中間的存在で、TTヘルメットの特徴であるエアロダイナミクスと、ロードヘルメットの通気性の良さ(冷却機能)を併せ持っているのが特徴です。走るコースやその日の天候などに合わせて仕様を変えられるものもあります。現在販売されているトライアスロン向けのヘルメットは、軽量化や見た目の良さ(デザイン)にもこだわった製品が多く販売されています。
通気性の良さと扱いやすさが特徴のロードヘルメットは、通気孔がある分、頭に汗をかいても蒸れにくいため、レース中も快適に走行することができます。トライアスロンの練習時にロードヘルメットを活用したり、トライアスロン競技では、その日のコンディションに合わせ、ロードヘルメットを使用したりする場合もあるでしょう。
荒野や山岳地帯等、整備されていない道での高速走行、急坂登降、段差越えなどを含む広範囲の常用に対応したMTB(マウンテンバイク)は、ヘルメットもそれに対応した作りになっています。MTB用ヘルメットにはバイザーが取り付けられているのが特徴で、バイザーには、マウンテンバイク競技である「クロスカントリー」や「ダウンヒル」で山の中を走行する際に、木の枝や泥、雨、日光などから目を保護する役割があります。製品によっては、バイザーの着脱が可能なものや、角度の調整ができるものまであります。また、MTB用のヘルメットは面積が広く、後頭部までしっかり覆われている形のため、他のタイプのヘルメットと比べてより安全性が高いのが特徴です。
クロスバイクは、ロードバイクと同様、スピードに特化したスポーツ用バイクの一つですが、レース時のような前傾姿勢を取る必要はなく、シティサイクル(ママチャリ)のような感覚で走行することができるため、主に街乗りで使用されています。通勤時や通学時に利用するなど、凡庸性が高いのも特徴です。クロスバイク時に使用するクロスバイク用のヘルメットは、レース向けに作られたヘルメットとは異なり、通気孔が複数開いていることから非常に風通しが良く、街乗りでも着用しやすい、カジュアルなデザインが多くなっています。また、サイクル用ヘルメットとしてだけでなく、バイク(自転車)以外のアウトドアスポーツで活用することも可能です。
トライアスロン競技では、基本的に、公益財団法人日本自転車競技連盟(JCF)の基準に適合したヘルメットを使用しなければなりません。また、競技規則に関係なく、大会でも練習でも、ヘルメットは安全性の高いものを選びたいですよね。ヘルメットの安全性を判断する基準には、JCFマーク、SGマーク、CEマーク、CPSCマークなどがあります。各安全規格についてご説明させていただきます。
JCFマークは、(公財)日本自転車競技連盟(JAPANCYCLINGFEDERATION)が定める、「ヘルメットの性能およびその試験基準」をクリアした製品であることを示すもので、日本自転車競技連盟および加盟団体が主催するレースでは、JCFマークがないヘルメットは着用不可となっています。
JCFの検査項目は、主に、「ヘルメットの通風性能・ヘルメットの衝撃吸収性能・あごひもの強さ・構造(頭部によくなじむか、視界が十分かなど)・試験(汗試験、頭髪油試験、外観試験、質量試験、衝撃吸収性試験など)」があります。
人数が多い大規模な大会になると、JCFシールが貼られているヘルメットを使用しているか、一人一人確認する機会はほとんどないのですが、JCFシールが貼られていないヘルメットを装備して出場し、万が一落車や事故を起こしてしまった場合、規約違反として保険が減額されることもあります。海外ブランドの製品には、このJCF公認マークがないものも多いため、商品を選ぶ際は注意するようにしましょう。また、安全基準の一つである「SGマーク」がヘルメットにない場合でも、JCF公認であれば、安全基準を満たしている製品と判断することができます。
JCFマークには、APPROVEDと記載された白色のシールと、RECOMMENDEDと記載された緑のシールがありますが、RECOMMENDEDと記載された緑のシールは、「JCF推奨ヘルメット」になります。JCF推奨マークには、日本自転車競技連盟(JAPANCYCLINGFEDERATION)の定める、「ヘルメットの性能およびその試験基準」をクリアしているもの、あるいは、SGマーク、CEマークの表示がされているものという条件があり、日本自転車競技連盟および加盟団体の主催する競技大会では、「JCF推奨ヘルメット」は着用することができません。レースなどに出場するうえで、「JCF公認」か「JCF承認」かの違いはとても重要なことですので、大会で使用することを目的としてヘルメットを購入する際は、必ず「JCF公認」のものを選ぶようにしましょう。
「SG」とは、SafeGoods(安全な製品)の略であり、「SGマーク」は、一般財団法人製品安全協会が、消費生活用製品の安全性を認証する制度の基準(SG基準)に適合していることを示すマークになります。SGマークは、自転車用ヘルメットだけでなく、一般の製品も対象となっているため、日常生活でも身近なマークとなっています。
「SG基準」は、「乳幼児用品」、「福祉用具」、「自転車・自動車用品」、「スポーツ・レジェ用品」といったカテゴリ別で基準が定められており、サイクリング用ヘルメット(乗用車用ヘルメット)の場合は、「外観及び構造・材料・質量・衝撃吸収性・耐貫通性・孤児装置の強さ」などの検査項目が挙げられます。
他の安全基準と違うところは、「SG製品の欠陥により人身事故が起きた場合、1億円までを限度とする対人賠償保険がついている」というところです。しかし、ロードバイクやMTBなどで使用する自転車用ヘルメットは、JCFに申請している製品が多い傾向にあります。
「CE」は、フランス語で「欧州の法律に適している」という意味を表すConformitéEuropéenne(英語:EuropeanConformity)の略であり、「CEマーク」は、製品をEU加盟国へ輸出する際に、安全基準条件(使用者・消費者の健康と安全および共通利益の確保を守るための条件)を満たしていることを示すマークになります。多くの製品が対象となっているため、CE規格は製品ごとに分類されており、自転車用ヘルメットには、「EN1078」が安全基準として制定されています。CE規格では、衝撃吸収性や落下テスト、摩擦、あご紐ストラップ等の強度検査が行われます。
「CPSC」は、大統領直属の独立政府機関である、アメリカ合衆国消費者製品安全委員会が定めた安全基準であり、自転車ヘルメットの規格は1999年に制定されました。CPSCマークは、アメリカ国内ではヘルメットの安全性を判断する基準の一つとして考えられており、検査項目には「ヘルメット装着時の視野の確保・ストラップの伸縮性・衝撃吸収性」などがあります。
他にもさまざまな安全規格がありますが、レースで着用するヘルメットであれば、必ず「JCF公認」の製品を選ぶようにしましょう。また、練習のみでの使用ということであれば、JCF以外の他の規格を目安に選んでみても良いかもしれません。安全基準をクリアした製品であるため、安心して使用することができます。
自転車用ヘルメットは、ブランドによって内側の形状が異なるのはもちろん、同じブランドのものでも、製品のモデルによって装着した際のフィット感が異なります。自分の頭のサイズに合わないヘルメットを使用してしまうと、走行中にズレやすくなって走りに集中できなくなるだけでなく、頭部とヘルメットにすき間があることで衝撃を吸収・分散させることができなくなり、万が一転倒したり事故に遭ったりした際に、頭部を保護するというヘルメット本来の役目を果たすことができなくなります。また、締め付けすぎるのも走行中のストレスとなるため、もしヘルメットを試着できるようであれば、かぶった際に両手でヘルメットを左右に動かし、その時、額の皮膚が一緒に動くくらいをちょうど良いサイズの目安として、製品を選んでいくのがおすすめです。
また、ヘルメットのサイズ選びをする前に、まずは、自分の頭囲の長さを把握しておくことが大切です。頭の一番膨らんでいる部分(頭の外周で一番大きな部分)を測定し、ヘルメットのサイズと照らし合わせて、自分の頭部に合いそうなサイズを絞っていきます。頭部の前後の幅や左右の幅などを知っておくと、より選びやすくなるでしょう。
最近の自転車用ヘルメットには、アジアンフィットのモデルも多くあり、以前より製品を選びやすくなりました。これは、欧米人が、左右の幅が狭く、後頭部が出ている楕円形の頭部が多いのに対し、日本人は、前後が短く、側頭部が張り出ている丸形の頭部が多いためです。特に海外ブランドの製品は、どんなに機能性に優れたヘルメットでも、頭の形にフィットしない製品が多い傾向にありました。アジアンフィットは、横幅が広いワイドタイプのヘルメットとなっており、日本人の頭部にフィットしやすいのが特徴です。頭の形も個人差があるため、アジアンフィットだからといって必ずしもすべての日本人に合うというわけではありませんが、製品を選ぶ際の一つの基準になります。
ヘルメットの重さは首や背筋の負担にも関わってくるため、重量が重いものは、疲労感や筋肉疲労を起こしやすくなります。特に競技時間が長時間に及ぶものは、ヘルメットの重さが非常に重要で、軽いものほど快適に走行することができ、結果的にはパフォーマンスの維持に繋がります。
また、通気孔の数も選ぶポイントの一つです。少しでも空気抵抗を減らすために作られたヘルメットは、通気孔の数も最小限にとどまっており、スピードが出る分、頭が汗で蒸れやすくなっています。
スプリント・ディスタンスのような、短距離でスピードが重視のレースには、空気抵抗を減らした「エアロヘルメット」を、競技時間が長時間にも及ぶロングディスタンスには、軽量で通気性の良い「ロードヘルメット」を装着するなど、走るコースや距離、その日の天候、身体のコンディションなどに合わせて、装着するヘルメットを選べるようにしておきましょう。
ただし、軽量化されたヘルメットは疲労が溜まりにくいですが、価格が高い傾向にあるため、コストの面も気にする必要があります。また、軽量化されたものの中には、素材が薄くなることで衝撃に弱くなっているものもあるため、安全基準を満たしているかなども確認することが大切です。
また、冒頭でもご説明したように、大会ごとで使用が禁止されているヘルメットもあるため、それぞれの大会要項にはしっかり目を通しておくようにしましょう。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/qbei/pc-kask-infinity/)
安全認証基準/CEEN1078、JCF公認。クローズドヘルメットのアエロダイナミックスと、ロードレース用の冷却効果を組み合わせ、エアロ効果と通気性を両立させたエアロロードヘルメットです。ヘルメット上部にあるエアベントカバーは片手で開閉することができ、走りながら自分で調節することができます。サイズは、MサイズとLサイズ(59-62cm)が、カラーは全部で8色あります。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/bebike/lazer-bullet/)
日本人に多い頭の形に合わせてつくられた、アジアンフィットのエアロヘルメットです。マグネット式のため、ZEISSレンズは着脱可能となっています。額部分のアジャスタブルベンチレーションは、開閉することで、空力エアロと通気性の調整が可能。LEDバックライト付きで、夜間の走行も安全です。カラーは、ホワイトの他に、レッドやマットブラックがあります。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/qbei/pi-760426/)
JCF公認。衝撃エネルギーの掛かる向きを変えてくれる「MIPSシステム」搭載で、トライアスロン、ロングTT向けモデルとなっています。空気抵抗の低い形状で、冷却性能とのバランスも良く、素材には軽量なポリカ―ボネート製シェルを採用。独自のアイシールドは、磁性アンカーアタッチメントにより取り外しも可能で、隅々まで見渡せる視界の良さや鮮明さがあります。カラーは全部で7色。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/kyuzo-shop/ac-gf003841/)
JCF(日本自転車競技連盟)公認。フロントバイザーの着脱が可能なため、ロードバイクやマウンテンバイクなど、ジャンルにこだわらずマルチに対応できる本格派モデルです。優れた通気性脳を発揮し、A.I.ネットで虫の侵入も防止。軽量でありながら、ヘッドはしっかり保護してくれます。カラーは全部で9色、サイズは「M/L」と「XL/XXL」から選べます。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://www.amazon.co.jp/Shinmax自転車ヘルメット-LEDライト付きサイクルヘルメット-安全ライト付き自転車ヘルメット-ゴーグル超軽量自転車ヘルメット-取り外し可能なシールドサンバイザー付き/dp/B07KCTPN9H?ref_=bl_dp_s_web_4210265051&th=1)
CPSC認証、CE認証。強力なマグネットにより、ゴーグルの取り外しが可能なため、通常時・低速時・高速時の3つのモードに変形させることができます。高密度で耐久性に優れた高品質素材を使用し、衝撃を吸収してヘッドを保護。3つの証明モードがあるLEDライトが付いており、夜の走行も安全です。ダイヤルシステムとストラップにより、それぞれのヘッドサイズに合わせて調節ができるため、男性と女性のほとんどが着用することが可能となっています。カラーは8色の中から選べます。
画像引用元HP:楽天市場公式サイト
(https://item.rakuten.co.jp/kyuzo-shop/ac-gf004393/)
JCF(日本自転車競技連盟)公認。Kabutoが独自に開発した空力機能により、しずく型の空気の流れを造り出します。比較的軽量なのと、深めのエアルート設計により、溜まった熱気を排出してくれるため、長時間のライディングも快適です。エアインテークからの虫の侵入を防ぐことを目的として、A.I.ネットも使用しているため、フィッティングを重視する方にもおすすめ。安全性の高い瞬間消臭素材採用で、約3年の消臭効果も期待できます。カラーは全部で8色、サイズは「XS/S」、「S/M」、「L/XL」の3つから選べます。
雨天走行後、濡れたヘルメットはすぐに手入れ用のタオルで拭くようにして、ヘルメットの劣化や雑菌が増殖してしまうのを防ぎます。
走行中は汗をかくため、ヘルメットの内側にあるインナーパッドはニオイを発生しやすく、汚れが溜まりやすい部分となっています。インナーパッドの取り外しが可能な製品は、使用後こまめに洗うようにしましょう。洗う際は、洗濯機で回すのではなく、桶などに水またはぬるま湯を溜めて中性洗剤を溶かし、インナーパッドを揉み洗いしていきます。シェル(外殻)は中性洗剤を含ませた布でやさしく拭き取ると効果的です。ただし、水洗いはしないようにしましょう。
一度購入すればずっと使えそうなイメージがあるヘルメットですが、ヘルメットの内側には衝撃を吸収するための発泡スチロールがあり、発泡スチロールは、長く使用していくうちにどんどん劣化していきます。発泡スチロールは少しの衝撃で変形しやすく、水分に弱いという特徴があります。そのため、ヘルメットを落としてしまったり、汗や雨で濡れてしまったりすると、腐食するスピードが速まる原因にもなります。発泡スチロールがつぶれてしまった場合は、衝撃を吸収する力がなくなってしまうので、頭部を保護するためのヘルメットとして二度と使用することができなくなります。衝撃吸収材である発泡スチロールの劣化は、ヘルメットとしての機能が果たせなくなることになるため、ヘルメットの寿命は約3年と考えた方が良いでしょう。
今回はトライアスロン向けヘルメットをご紹介させていただきましたが、いかがでしたか?
大事なポイントは
ということです。
トライアスリートの頭部を守るという重要な役割を持ったヘルメットは、トライアスロン競技では必須アイテムの一つです。さらに、「タイム」や「走行中の快適さ」などにも関わってくるため、どのヘルメットを装着するかは、使用する機器の影響を受けやすいバイク種目にとって、大切なポイントの一つになります。ぜひ、自分に合ったヘルメットを見つけて、ライディングをより安全で快適なものにしていきましょう。