人間の俊敏性というのは、スポーツをはじめ、様々な場面で活躍する機能です。特にサッカーなどの瞬発力が求められるスポーツにおいては、非常に重要視される能力になります。本記事では、そんな俊敏性を高めることができる、おすすめのアジリティトレーニングメニューをご紹介していきます。
サッカーやバスケットボールなど、スポーツ競技を挙げれば様々なものが思い浮かぶことでしょう。それらにはアジリティ、すなわち敏捷性が非常に重要とされており、一般的には体をコントロールする能力のことを指しています。 実際のスポーツ競技においては、刻一刻と変わる場の状況を素早く見極める判断能力、体を動かすバランス、反応、コーディネーションなどの様々な能力を動員しなければならず、不足していれば当然適切な行動がとれなくなります。
特にアジリティが求められるのは、サッカーやバスケットボールなどの球技です。これらは短距離や長距離走のようにコースが決まっておらず、場面は常に変化します。それらに対応するためにも、やはりアジリティ能力は不可欠という訳です。
そもそもアジリティというのは、日本語で一言に訳すと「俊敏性」という言葉になります。語源は英語で素早いという意味を持つ単語である「agile」とされており、スポーツ分野をはじめ、ビジネスの場でも使われることは少なくありません。 例えばサッカーにおいては、チームと相手の動きを瞬時に理解し、それに対して素早く動く俊敏さという意味で用いられます。ビジネスにおいても、状況に対して素早く反応し行動する能力、という意味合いで使わわれることがあります。
俊敏性などという難しい言葉を使わなくとも、似たような言葉で「速さ」と簡単に言いかえたほうが分かりやすいのではと思われるかもしれません。ですが、ここでもサッカーを引き合いに出してみると、単純な速さとは区別して使われています。 サッカーでは「SAQ」という言葉が使われ、Sはspeed=速さ、Aはagile=敏捷性、Qはquickness=俊敏性と分けられています。どれも似たような言葉に見え、実際にスポーツの基礎能力としてひとくくりにされていました。 ですが、これらを3つに分け細分化する事で、人間の持っている本来の能力を最大限発揮できるという考えのもと、様々なトレーニング方法が考案されています。
アジリティは俊敏性や敏捷性といった意味を持っていますので、トレーニングでは、これらの能力を向上させることが主な狙いです。アジリティトレーニングは大きく計画性と反応性に分けられます。 計画性では、レースのようにあらかじめ決まっているルートを進んだり、予測できることに対応するトレーニングを行います。ラダードリル、コーンドリルなどが代表的で、最初に計画性のトレーニングを行い、素早く体を動かす能力を身に付けます。
そしてもう1つの反応性では、直後に何が起こるか分からない状況下からいち早く理解し、反応するトレーニングを行います。視覚、聴覚情報などを使っての状況判断も行い、刻々と変化するスポーツの場面で即座に行動が出来るように訓練をします。
トレーニングにおいては何のために取り組んでいるのか、その目的をしっかりと把握することが大切です。意識をするべきポイントを事前につかんでおくことで、より効果的にトレーニングに取り組めます。
まず1つ目に注意すべきポイントは、姿勢です。どんなトレーニングであっても正しい姿勢を意識し維持しながら取り組むことはとても大切ですが、アジリティトレーニングもその例外ではなく、姿勢が重要視されます。 正しいし姿勢を身に着ける事で、スポーツにおいても安定したプレイが可能になるからです。特に急激な方向転換をする際には、体に大きな負担をかけることになりますが、正しい姿勢であれば完全にとは言わなくとも、その負荷を分散させられるのです。 逆に、悪い姿勢ではその負荷を分散しきれずに、特定の部位に負荷が集中して怪我につながる恐れがあります。姿勢というのはトレーニング中だけではなく、私生活でも意識すべきとされています。
2つ目は、方向転換です。スポーツでは、方向転換をする事は頻繁に起きます。特にサッカーボール、バスケットボールなどのスポーツは、相手チームにボールを取られた場合にすぐに方向転換をして、相手を追わなければなりません。 実際に方向転換をする際、今まで向かっていた方向から減速をし、向きを変えてから素早く加速をするという流れになります。移動スピードが速ければ速いほど、方向転換の際の減速時の姿勢が低くなり、そこからの加速の時最も力が発揮しやすいです。 転換が上手く、つまり素早くできるようになればなるほど、相手に逆を突かれた際にも素早い対応が可能になります。その為には、アジリティトレーニングで体幹をしっかりと鍛える必要が出てきます。
加速、減速をしっかりとできているのかを意識することも大切です。まず加速をするためには、大臀筋や大腿四頭筋が重要になりますので、これらを鍛えて瞬発的な加速を可能にする必要があります。逆に減速では、ステップやフットワークを高めるのがポイントです。 実際にアジリティトレーニングを行ってみると、ステップが苦手、フットワークが苦手など、自分が苦手としている動きが見えてくるものです。その場合、それらを克服できるようにトレーニングメニューを組むことをおすすめします。
以上、スポーツにおけるアジリティトレーニングの重要性、トレーニングの中で意識するべきポイントについて解説してきました。ここからは、おすすめのアジリティトレーニングをご紹介していきます。
まず1つ目のトレーニングは、ラダートレーニングです。このトレーニングは、ラダーというはしごの形状をしたロープを使って行います。各枠に様々な足の置き方を実践する事で、俊敏性の向上を狙うものです。 トレーニング方法はいくつかあり、例えば1マスに1歩から2歩入れて縦に走るクイックランは、初心者でも始めやすい手法です。5メートルから10メートルの瞬間的な加速を身に着けるのに効果的で、サッカーの際にはこうした場面がよくあります。 その他にも、1マスに2歩ずつ入れて縦ではなく横に走るラテラルラン、1マスずつ1歩ずつ左右交互に足を入れていくクロスカントリーなど、シーンで役立つかどうかをイメージしながら取り組んでみましょう。
続いて2つ目は、Tドリルです。10メートル×10メートルのTの字をコーンなどを用いて作り、T字の先端と横線の中央にコーンを配置します。Tの字の下部に置いたコーンを出発点として横線中央までダッシュし、コーンにタッチしたら減速します。 続いて素早く重心を横に移動させ、横走行で右側にあるコーンを目指します。右側にたどり着いたら減速し、今度は同じように左側にあるコーンを目指して横走行をします。そして横線中央のコーンまで戻り、スタート地点へ後ろ向き走りで戻って終了です。 短い距離の中で、加速と減速を違う走り方で行うトレーニングです。走る際には地面をグッと押し、減速する際にはしっかりと腰を落とすことでやりやすくなります。
3つ目は、ハイクリーンです。こちらは走ったりすることはなく、ジム内で行うウエイトトレーニングの1つであり、バーベルを用います。デッドリフトのようにバーベルを地面から持ち上げて、腰まで持ち上げます。 持ち上げた勢いのままに、バーベルを肩まで一気に持ち上げます。同時に肘を前に出して、肩にバーベルを載せるような形にして終了です。 一見俊敏性とは関係なさそうですが、全身の筋肉を連動させて行っていますので、瞬時にパワーを発揮する必要がある点がトレーニングとして有効なのです。
ラインを中央と5メートルの間隔をあけた合計3本引いて用意します。ラインではなく、コーンを置いても良いです。中央ラインから左右どちらかに向かってスタートし、ラインかコーンにタッチしたら方向を変え、中央に戻ります。 この際にはタイムを計り、最初にスタートしてから元に戻ってくるまでを計測します。トレーニングの際には、左右両方の記録を残すようにしましょう。目標のタイムは、大学でもトップレベルである4.5秒です。
スクエアジャンプでは、高さ15センチ程度のハードルを用います。ハードルは4つ用意して四角を作り、その中心をスタート地点としてハードルの外側にジャンプをします。四角の中にジャンプで戻り、前、右、左、後ろの4方向すべて同じく行います。 ハードルさえ用意できれば、狭い場所でも取り組む事が出来ますので、広いスペースが確保できなくともトレーニングができます。ジャンプの際には地面との接地時間を短めにして、着地する際に膝をできる限り曲げないようにしましょう。
8の字&ハードルトレーニングは、コーンを2つ、ハードルを5つ使って行います。横にコーンを2つ並べて、その先にハードル5つを置いて、走り始めたら進行方向右側のコーンを回って、その後同じように左のコーンも回ります。左のコーンを回ったら、ハードルを1つ飛び越えます。 全てのハードルを飛び終えたら反転して戻り、もう一度反転して同じように5つのハードルを飛び越えます。走る、飛び越えるという動作が入り混じりますので、素早い動作の足運びが要求されるトレーニングです。
続いては、ペンタグラムドリルです。ペンタグラムという名前の通り、このトレーニングでは5つのハードルを用意して、これを五芒星の形に配置します。そして、五芒星を描くときと同じようにステップを踏んでいきます。 移動する時には常に前を向いた状態で、方向転換をするときには次のマーカーとなるハードルへ目線を向けます。ハードルが無くとも五芒星ができれば良いので、ペットボトルなどで代用しても問題ありません。
サーキットトレーニングでは、異なるトレーニング方法を順々に行います。ラダーを置いて横の3メートルから5メートルにコーンを用意し、まずラダーでクイックランをしてから、サイドステップでコーンまで移動したのちに全力走をします。 この1つのトレーニングだけで、スピード、アジリティ、クイックネスという3つの要素全てを鍛える事が可能です。コーン後ろに同じ間隔をあけてもう1つコーンを用意し、バックステップを取り入れても良いです。
スタードリルは、9個のコーンを3×3で配置して、スタート地点から別のコーンへ、到着したら方向転換をして、手前で減速して立ち止まります。最初は方向を自分であらかじめ決定し、慣れてきたらコーチなどに目的地を指示してもらうシャッフルを行います。
最後は〇×トレーニングです。円を縦3列、横にも3列作り、3人で1つのチームを2つ作って〇×ゲームをします。チームごとで色の違うタオルを用意して、チームごとに1人ずつ同時にスタートして、円の中にタオルを入れたり、移動させます。 最終的に、どちらかのチームが一列にタオルを並べる事が出来たら終了となります。相手のタオルがどこにあるか、見方が一列に並べやすくするようにと、認知的要素を鍛えられます。
アジリティトレーニングは、自分の身一つでできるものがあまり多くはありません。グッズを使用することで、幅広くトレーニングに取り組めるようになります。
まずはトレーニング用ラダーです。アジリティトレーニングの初心者にも始めやすいクイックランなども、このラダー1つあれば取り組み始められます。ラダーの幅はトレーニングに合わせての調整が行えます。
2つ目はマーカーコーンです。Tドリル、8の字、スタードリルなどの様々なトレーニングに欠かせないグッズで、オレンジやブルーなどの全5色、合計25枚あり視認性も良好なコーンとなっています。
バランスディスクは、空気を入れてバランスを取るトレーニングに用いるグッズです。アジリティに必要な体幹をバランスを取る訓練をすることで向上させられます。
最後にコンパクトなミニハードルです。こちらもスクエアジャンプやペンタグラムドリルなど、ご紹介したトレーニングの中でもよく用いられます。回転させるだけで、20センチと30センチの2段階の高さで切り替えて使用可能です。
俊敏性をUPさせるために有効なアジリティトレーニングについてご紹介しました。サッカー、フットボール、バスケットボール、テニス等など、アジリティは各種のスポーツにおいて必須とも言って良い能力です。この能力を鍛えて伸ばし、今まで以上のプレーにつなげましょう!